様々なカフカ
2013年04月07日 00:00
この前、カフカの『変身』を色んな人の文体で書いているサイトを見かけた。
そのサイトには、夏目漱石、太宰治、坂口安吾、武者小路実篤などと言った昭和期までの文豪だったり、椎名林檎やスチャダラパーと言ったアーティストだったり、
ドラゴンボールやドラクエ、ファミ通などといったアニメやゲームだったり、とにかく多彩なジャンルで『変身』を模写していて凄かった。
いろんな人の『変身』を書いてみる。
【見本】
ある朝、グレーゴル・ザムザがなにか気がかりな夢から目をさますと、自分が寝床の中で一匹の巨大な虫に変わっているのを発見した。彼は鎧のように堅い背を下にして、あおむけに横たわっていた。頭を少し持ち上げると、アーチのようにふくらんだ褐色の腹が見える。腹の上には横に幾本かの筋が付いていて、筋の部分はくぼんでいる。腹の膨らんでいるところにかかっている布団はいまにもずり落ちそうになっていた。たくさんの足が彼の目の前に頼りなげにぴくぴく動いていた。胴体の大きさに比べて、足はひどくか細かった。
「これはいったいどうしたことだ」と彼は思った。夢ではない。見渡す周囲は、小さすぎるとは言え、とにかく人間が住む普通の部屋、自分のいつもの部屋である。四方の壁も見慣れたいつもの壁である。テーブルの上には、布地のサンプルが紐を解いたまま雑然と散らばっている。――ザムザは外交販売員であった。――テーブルの上方の壁には絵がかかっている。ついこのあいだ、絵入り雑誌にあったのを切り取って、こぎれいな金箔の額にかけておいた絵だ。毛皮の襟巻きを巻いた婦人がひとり、きちんと椅子にかけて、大きな毛皮のマフの中にすっぽりさしいれた両腕を前に差し出している絵である。
それからグレーゴルは窓の外を見た。陰気な天気は気持ちをひどくめいらせた。――窓の下のブリキ板を打つ雨の音が聞こえる。――「もう少々眠って、こういう途方もないことをすべて忘れてしまったらどうだろうか」と考えてみたが、しかしそれはぜんぜん実行不可能だった。なぜかというと、グレーゴルには右を下にして寝る習慣があったが、現在のような身体の状態ではそれは出来ない相談であった。どんなに一生懸命になって右を下にしようとしても、そのたびごとにぐらりぐらりと身体が揺れて結局もとのあおむけの姿勢に戻ってしまう。百回もそうしようと試みただろうか。そのあいだも目はつぶったままであった。目を開けていると、もぞもぞ動いているたくさんの足がいやでも見えてしまうからだ。しかしそのうちに脇腹のあたりに、これまで経験したことのないような軽い鈍痛を感じはじめた。そこでしかたなく右を下にして寝ようという努力を中止した。
(高橋義孝訳・新潮文庫版より)
有名人で『変身』。
時代も職業も国籍も超えた、有り得ないコラボ。
浜崎あゆみさん
みんな~、ザムザだよ~!
毒虫になっちゃったよ~!
ダンディ坂野さん
ゲッツ!
ザムザ~、この前~、朝起きてみたら毒虫になってたの~!
ショック!
サンドウィッチマンさん
富澤「そんなザムザさんに質問です。あなたは毒なにになったんでしょう?」
伊達「毒虫に決まってるだろ。何に見えるんだよ!」
富澤「さあ……」
前田敦子さん
毒虫のことは嫌いでも、グレーゴルのことは嫌いにならないで下さい!
芥川龍之介さん
或日の朝の事である。外交販売員のグレエゴル・ザムザが眼をさまして見ると、寐床の中で一疋の巨大な毒虫に変わつてゐる事に気が付いた。これは夢などではない。若し又誰か信じない者があるとすれば、プラハ郊外のザムザ家を尋ねて見るが善い。グレエゴルは、憂鬱な笑みを浮かべながら、部屋の中に閉じ籠つてゐるであらう。兎に角、グレエゴルの姿が毒虫に変わつていたと云う事は事実である。
グレエゴルの見渡す周囲には、人間が住む普通の部屋が広がつてゐた。のみならず、何時も見慣れてゐる筈の自分の部屋であつた。テエブルの上には、布地のサンプルが紐を解いたまま、雑然と散らばつてゐた。それからテエブルの上方の壁には、二三日前、絵入り雑誌から切り取つたばかりの、毛皮の襟巻を巻いた婦人の絵が掲げられてゐた。
――これは一体どうしたことだ!
グレエゴルは自分の身体を覗きこんだ。仰向けに横たわつてゐる背は鎧のやうに堅く、褐色の腹はアアチのやうに膨らみ、幾本かの窪んだ筋が付いてゐた。それから、ひどくか細い無数の足が、彼の胴体から蠢いてゐる。これらの特徴を一々、数え立てていれば、際限はない。それ程、グレエゴルの外貌は、非凡に、醜く出来上がつてゐたのである。この男が、何時、だうして、このやうな姿になつたのか、それは誰も知つてゐない。
グレエゴルはぼんやり、窓の外を眺めてゐた。窓の下のブリキ板を打つ雨音は、彼自身をひどく不快にした。とりとめもない考えをたどりながら、先刻から降り続いてゐる雨の音を、聞くともなく聞いてゐたのである。
――もう少々眠つて、かう云ふ途方もない事をすべて忘れてしまおう!
グレエゴルは、ようやく考えを逢着させた。しかし、それらの考えは、到底不可能な事であつた。グレエゴルには、右を下にして寐る習慣があつたのである。しかし現在のやうな身体の状態ではそれは出来ない。何度右を下にしやうとした所で、結局身体が揺れて、元の仰向けの姿勢に戻つてしまうばかりである。彼は眼を開かなかつた。何故なら、胴体から伸びる無数の足が蠢いてゐるのが、いやでも見えてしまうからである。
やがて、生まれて以来感じた事のない軽い鈍痛がグレエゴルを襲い始めた。そこで仕方なく右を下にして寐やうと云ふ努力を諦めた。
グレエゴルの見渡す周囲には、人間が住む普通の部屋が広がつてゐた。のみならず、何時も見慣れてゐる筈の自分の部屋であつた。テエブルの上には、布地のサンプルが紐を解いたまま、雑然と散らばつてゐた。それからテエブルの上方の壁には、二三日前、絵入り雑誌から切り取つたばかりの、毛皮の襟巻を巻いた婦人の絵が掲げられてゐた。
――これは一体どうしたことだ!
グレエゴルは自分の身体を覗きこんだ。仰向けに横たわつてゐる背は鎧のやうに堅く、褐色の腹はアアチのやうに膨らみ、幾本かの窪んだ筋が付いてゐた。それから、ひどくか細い無数の足が、彼の胴体から蠢いてゐる。これらの特徴を一々、数え立てていれば、際限はない。それ程、グレエゴルの外貌は、非凡に、醜く出来上がつてゐたのである。この男が、何時、だうして、このやうな姿になつたのか、それは誰も知つてゐない。
グレエゴルはぼんやり、窓の外を眺めてゐた。窓の下のブリキ板を打つ雨音は、彼自身をひどく不快にした。とりとめもない考えをたどりながら、先刻から降り続いてゐる雨の音を、聞くともなく聞いてゐたのである。
――もう少々眠つて、かう云ふ途方もない事をすべて忘れてしまおう!
グレエゴルは、ようやく考えを逢着させた。しかし、それらの考えは、到底不可能な事であつた。グレエゴルには、右を下にして寐る習慣があつたのである。しかし現在のやうな身体の状態ではそれは出来ない。何度右を下にしやうとした所で、結局身体が揺れて、元の仰向けの姿勢に戻つてしまうばかりである。彼は眼を開かなかつた。何故なら、胴体から伸びる無数の足が蠢いてゐるのが、いやでも見えてしまうからである。
やがて、生まれて以来感じた事のない軽い鈍痛がグレエゴルを襲い始めた。そこで仕方なく右を下にして寐やうと云ふ努力を諦めた。
……そのサイトに便乗してしまいました。
まだまだ色んな意味で力不足を感じますね。